ミャンマー人の方からのCDMに関する投稿への感想

昨日投稿した「日本に帰国したから話す、CDMの是非と誰も知らぬ間に死ぬ人々」という記事に対して、大変多くのご感想やご意見をいただきました。ありがとうございました!

その中で、医療現場の現状をよく知る日本在住ミャンマー人の方から頂戴したメッセージが素晴らしく、是非、他の方々ともシェアしたかったのでここに転載させていただきます。

Twitterアカウント @NauntNaunt さん、大変ありがとうございました!

 

ミャンマー人読者からの声

—↓転載開始↓—

以下超長文になってしまい、大変失礼致します。

高田様のミャンマーの滞在期間が長いので以下のほとんどの内容は耳にしているかと存じますが、私からの観点を述べさせて頂ければ幸いです。

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1・新紙幣の印刷

仰る通り軍が金が無ければ新紙幣を印刷すればいいと言うことですが、恐らく軍の思い通りに行っていないです。

ミャンマーの紙幣印刷工場はMagway州のWaziという工場で、運行する為にAyardaw発電所の運行が必要です。ところが、発電所の従業員たちが2月〜3月初旬までにCDMに参加していて紙幣の発行をブロックしていました。その後、情報がないので従業員らがおそ恐らくプレッシャー掛けられて通常運行している可能性が大きいです。

その後ドイツから紙幣印刷の材料がの供給がと止まり、かなりダメージを受けたと思われます。急な材料の変化などに対応できる技術があるかというのも一つで、軍はクーデターを綿密に計画していたとしても国民がそこまで抵抗する、こういう方法で抵抗して来ると予想していなかったと思います。

そのため、シュエダゴンパコダを含む複数の仏教有名なパゴダから金、御賽銭を軍が持ち去っていると言う話は証明できない噂ではありますが、可能性はあります。クーデター後複数の慈善機構を押収しているのも、政治面の理由もあれば金が欲しいからと言うのもあり得ます。クーデターのタイミング的にも、国の年度予算を使い切っている時で国民も各税金の納めを控えているので手元に金が無いのは確実です。

なので、繰り返しますが金が無ければ印刷すればいいと言うのは、一部はそうかもしれませんが恐らくそこまで上手くいっていないと思います。

ここに関して高田から補足すると、場合によっては現金印刷に影響は多少出ているのかもしれませんが、別の読者からいただいたお話によると、ミャンマー国軍政府は中央銀行の政府預金残高の数字を自由に変更する(増やす)ことが可能なため、もし市中に現金を供給する必要がなければ、お金を無限に増やすことは可能です。お金=現金と思われがちですが、お金=信用なので、必ずしも現金が必要なわけではありません。

2・CDM活動について

まず、自分の背景として妹が医者で、友人の大半も医者です。彼らがどれだけ心を痛めてCDMと言う道を選んだのかよく見てきました。CDMの理想としても医者が最後の一線でいるべきことを彼らも重々承知しております。

ではなぜ医者が一番前に立ってCDM活動をしているのかと言うと、医者はミャンマーで有識者として世間的尊敬されており、医者たちの間の繋がりが特に強く、何かあれば団結力、団体力も強いんです。ミャンマー政府の組織としても、軍のお偉いさんが(軍事に関係ないところでも)各官庁のトップを務めている中、Ministry of Health(日本の厚生労働省にあたる)は比較的軍の介入が少ないところです。

CDMの目的は元々政府(軍政府)の運営をストップさせるという目的であり、そうさせるために直接有効なのは内務省、財務省などの公務員の参加が必要です。ただ、残念な事情で内務省は軍の関係者の天下であり、財務省も軍の利害関係者が多い省となっていました。その為、「通常なら」医者が介入すべきものではないが、軍政府に対抗するための緊急対策として社会的影響力が大きい医者たちが先頭に立っているわけです。その影響力、団結力を受けて他の省の公務員もどんどん参加してきたと思われます。大きい話からすると、CDMに参加した医者たちは医療の(論理原則)道徳として「①自律性原則,②与益原則,③無加害原則,④正義・公平」と4つのあつうちあるうち④の正義の為に戦っています。

ただ、最初から完全なCDMではなく、医者たちも含め躊躇した公務員らが通常業務を行いながら赤いリボンを胸につけて政府に対する抵抗を示す「Red Ribbon Movement(RRM)」も並行してました。その後、RRM活動の方が流行ってきてCDMの目的から外れてくることになりました。RRM活動だと武器頼りで政権を取ろうとしている軍にとって痒くも痛くもなく、まさかの軍から対CDMの策として「官庁ごとRRM賛同の集合写真を取ってSNSに載せたら通常業務に戻ってくださいね」というような内部指示があり、ただの見せつけ活動になってきてCDMは崩壊する寸前でした。

そこでみんなが中途半端な気持ち、態度では軍に抵抗するなんか不可能だということに改めて気づきCDMを徹底的に行うことを決意したのです。軍は中途半端な気持ちでクーデターを起こしたわけではないので。。

医者たちがCDMを決意した時も医療難民のことを一番気にして心を痛めておりました。

だれよりも患者を治してほしいのは、救いたいのは医者の彼らなので。。
(直接関係ないお話ですが、ミャンマーでお医者さんは憧れる職業ではありますが、公立病院の医者(公務員)の給与は月約200,000チャット(1万8千円程度)です。

医者と患者数の比率がとんでもなく差があり、業務負荷が大きく3日連続休憩なく勤務なんて話もよく聞きます。なのに、給料は少ないので足りない分は私立病院で兼務するか、自分でクリニックを営んで生活費を賄うしかありません。

その為、ミャンマーで医者として従事するのはほぼチャリティー行為で、人を助けたいという心を持たないと無理です。耐えられない人は、公務員の医者としない(私立病院・自分のクリニックのみ)、もしくは、海外の病院に働くという道を選ぶ人が多いです)

CDMの徹底を開始した時も、公立病院で新規患者の受け入れをやめたが、入院中の既存患者に対して最後まで治療を終わらせていました。「我々患者が退院しない限り、この病院の医者たちがCDMに参加できない=軍と戦えない」と思ってくれて病院から逃げた患者たちもいるという話もありました。

軍政府の運行に従事ないということだけで、治療はしないということではないので、新規患者やフォロアップ検査が必要な患者に対しては、外部のクリニックなどで行えるよう対策・準備・周知をしていました。連携していない私立病院・クリニックなどでも公立病院の患者と自称すれば治療費をタダ、もしくは、割り引いて医療関係者の間で助け合いをしていました。

対策はしていたものの、それは治療が必要な人たち全部をカバーできないので「医療難民」が発生せざるを得ないです。また、CDMを参加する医者たちは軍によって次々と逮捕されており、亡命をしないといけないのでさらに外部での治療ができなく医療難民が増える原因にもなっています。それでも、亡命先で密かに必要な人に治療を行っている医者さんたちがいて本当に尊敬します。逮捕に至るまでは軍政府が今病院に戻ると許すよ、ステップアップさせるよなんて餌にして呼び戻していましたが応じる医者さんはありませんでした。

親友である一人の医者さんから「私はなんの罪も犯していないのに、なんで犯人のように逃げないといけないの」と涙ながらの問いを聞いた時、自分も何も助けられないので悲しかったです。ただただ「助けられなくてごめんね、でも本当に心から誇りに思ってるよ、感謝してるよ」と言えるだけで、彼女も「そうね、悲しんでるじゃ何もできないね、最後まで一緒に頑張ろうね」と微笑んでくれました。ちなみに、彼女は政府交流の一環で海外の有名な医学大の博士課程に留学することを内定獲得していましたが、CDM参加のために撤回されました。このCDM活動は彼女の将来を賭けた代価の大きい活動です。

なんで医者たちがここまでして軍を抵抗しているかというと、軍はまるで国の癌です(これを説明すると終わらないので今回は割愛致します)。今のクーデターを止められなければ将来の被害者が増えます。今、CDMを破棄すれば数人は助けられるが、将来の大勢の被害者を生み出すきっかけになると思っているからです。

ある有名な医者さん(CDM参加、亡命中)の経験話ですが、ヤンゴン市フラインターやー区で軍による大虐殺が起きた夜、彼は負傷者を助けるためにその区の病院に向かって治療を開始しました。重症者の手術を徹夜行なって治療できたのせいぜい1人2人目の手術を始まる前に手術室を出たら見たのは数えきれないほどの負傷者、重体者や次々と運ばれてきた死体。その光景を見て彼は悲しみ、怒りで心が折れました。「今私が手術ナイフを持って助けれるとしても数人、手に銃でも持って抵抗し、軍を排除できればこれら悲劇が少しでも止められるのではないか」と彼が思った程です。ただ、その後軍が病院にやってきたので、また怒りを呑んで亡命するしかなかったということです。

今は軍の弾圧による負傷者を治療すると自分でも命の危険があります。軍はそれほど人間の理性・感情を失っています。それを「通常・常識」のとおり抵抗するとただ死ぬのを待っていることになります。CDMも国民の代価が大きいですが、軍を対抗するのに効果がある、止むを得ない方法の一つになっています。CDM活動のよって医療・金融・生活に負の影響をもたらしていますが、一方でそのおかげでクーデターを起こして2ヶ月、軍が事実上国を営む事がまだできてないです。CDM活動の影響でどれだけ不便があっても市民の大半はCDMを批判どころか全部をかけてサポートしています。

外国の方からすると、ミャンマーの国民がなんでそこまで必死になって、自滅してでも、自分の命を含め全部をかけても抵抗しているのかわからないかもしれません。
①それは怖いからです。軍の支配下にどれだけ人権が侵害されるのか、国がどれだけ腐敗してボロボロになるのか経験したこともあり、もう一度繰り返されることを死ぬ以上怖いからです。今回は国民としても前代未聞の団結力を持っており、今回負けると恐らくもう二度とチャンスはないです。
②そして、相手は武器頼りの軍で、もはや通常の方法や対話・外交では通じないからです。(日本政府が望んでいるとおり?)対話が通じたとしても今の軍がいる限り国として本当の自由・民主制を得ることができません。どうせ4回目のクーデターがまた発生するだけです。なお、今回の「ミャンマー春の革命」の目的はスーチー政権に戻すこと(最初はそうだったかもしれません)ではなく、「ミャンマーの真の自由=軍の撤廃・再構成 + 形ではなく本当の多民族連邦国の形成」になっています。

高田様もご存知かと思いますが、ミャンマー人にとって寄付すること、できるだけお互いシェアすることは当たり前です。

その精神でクーデター後2ヶ月の今までなんとか我慢してきています。(私も給料の半分以上はCDMサポート、負傷したデモ隊員への援助金、亡くなった英雄たちの家族への援助金、難民の民族への支援、貧しい市民への生活援助などで使っています)

持続性のない無謀な策ではありますが、もうそれ以外の方法は無いです。

現在ミャンマーの国民が主に3つの柱で軍に対抗しています。
①デモ抗議
 →軍の支配に従事ないことを示す行動だが、もう一つの目的はCDMに参加している公務員を守ためです。デモ隊がなければ軍は好きな地域に好きなだけ簡単に捜査ができ、CDMが崩壊します。ただ、この手は軍のあまりにも酷い弾圧によって続くのが難しくなってきました。

②CDM活動
 →軍に政府としての運営をさせない。

③CRPH
 →ミャンマーの臨時政府。機能は複数ありますが、対軍ですと、
      対策①国連など海外の力で対抗。
      対策②ミャンマー連邦軍を形成させ、各民族を含む国民自らの力で闘う。(内戦は避けられない)

話が纏まらないですが、改めて高田様のRDM活動及び日本人の皆様の応援に感謝申し上げます。

そして、在ミャンマーの日本企業を巻き込んでしまったこと、日本政府を含め各国を巻き込んでしまったことを大変申し訳なく思っておりますが、ミャンマー人にとっては一か八か将来全部を賭けた戦いとなっておりますので、どうか引き続き見守り・応援を続けて頂けますよう宜しく申し上げます。

—↑転載終了↑—

なかなか日本のメディアでは報道されないようなミャンマー人視点でのご意見がたくさんあり、非常に参考になりました

私も軍の機能不全を促すCDMには賛成なので、あとは何とかしてその活動の弊害で亡くなる人を防げればいいなと思います。

改めまして、Twitterアカウント @NauntNaunt さん、大変ありがとうございました!

 

 


TK、アジアで財閥作るってよ(Startup in Asia)をお読み頂きありがとうございました。 

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